現役慶應生が運営する早慶東大限定でキャリア支援を行うPercifyという会社にお声がけ頂き、2~3年生が中心の学生の皆様向けのキャリアセミナーに登壇させて頂きました。テーマは「今後社会を勝ち抜く人材とコンサル各社の特徴について」。後者のテーマについては私が戦略コンサルティングファーム3社を経験した珍しい存在のため、学生の皆さんは特にその違いについて関心を寄せてくださったのだと思います。
質疑応答という形で学生の皆さんの質問に答えていきましたが、応えきれない程多くの質問を頂き、参加者の皆様の熱量を肌身で感じることが出来ました。個別の質疑応答内容についてはここでは言及しませんが、全体を通じて私が感じたことは以下の通りです。
- 私が大学卒業後に就職した1991年とは市場環境が大きく異なる
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- 1991年はバブル崩壊前夜(直後?)であり、圧倒的な売り手市場。私は体育会野球部の先輩の伝手で、すんなりと当時の人気業種である商社に就職が決まった時代。景気低迷、コロナ禍で就職難の時代を乗り越えた現在の学生の皆さんは、自分自身のキャリア展望や市場価値の作り方、見せ方について圧倒的に意識が高い。従って私の学生時代の行動や思考がほとんど役に立たない
- 就職人気ランキングの顔ぶれが大きく変化。商社は不動の人気業種のようだが、コンサルティングは1991年当時は、ほとんど学生の間では関心が寄せられなかった印象。むしろ「変わり者」(言い方を変えれば何かユニークなスパイクを持った学生)の就職先という認識があり、それがコンサルティングファームの良さ、と考えれていた時代。私がコンサルティングファームに転職した2000年ころには「一流大学卒の優秀な学生が応募してくるようになった」と、ある意味で嘆きの言葉も聞こえていたが、現在は人気の業種としての地位が完全に確立している状態。就職競争が激化するなかで、優秀な学生の皆さんの中でも圧倒的な差別化が必要になり、ファームとしても表面的・学問的な優秀さだけではなく、コンサルとして成功する人材の見極めが重要である
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- 中長期的な視野でキャリアを考え「今やるべきこと」を見極め注力することが重要である
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- 今の時代、誰も終身雇用を前提としたキャリアデザインを考える人はいないはず。これから40年前後、社会人としてキャリアを積んでいくにあたり、自身の関心、知識や経験の蓄積、職場やプライベートを取り巻く環境変化などに伴い、やりたい仕事も変わってくるなかで、大学卒業後の最初の就職先は、(もちろん社会人のはじめの一歩として重要ではあるが)「どの会社か」ではなく、「その会社で何がしたいか、どんな経験ができるか」を突き詰めて考えることが重要である。就職先が第一希望でなかったとしても落胆しないでほしい
- 「中長期的なキャリアビジョンは何か」と就職面接で問われることが良くあるが、私自身その答えは持ち合わせていなかった。あえて言えば当時の商社マンは「スーツケースをもって飛行機で飛び回る、世界を股にかけるビジネスマン」というカッコいいイメージで、自分もそうなりたいのかな、とぼんやりと考えていたぐらい。実際の私のキャリアを振り返ってみると、キャリアチェンジの背景には、目の前の目標となる山を登り、登頂後に山頂から見える新たな景色から、また次の山を目指し登頂する。登頂するまであきらめない。それを繰り返してきただけに過ぎないと思う。従って「今やるべきこと」は自分の手に届く目標を最低でも設定してその達成に注力すること。ただしその目標(たくさんある山から登頂を目指す山)を選ぶにあたっては、選択肢を広げるために、自分の視野を広げていくことが必要だと思う
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「今後社会を勝ち抜く人材とは」という問いに対して、私はベースラインとしての最低限のIQに加えてEQ(またはSQ)の高さ、とお答えしました。「最低限のIQ」とは特に問題解決能力を指しています。トライアスリードのミッションの一つとして、日本の社会人の皆さんの問題解決能力の底上げに貢献すること、と掲げているのは、そうした思いからです。一方でEQ/SQの高さが社会人としての成功に比例して
いる、という洞察が様々な研究結果から導かれています。EQとは4つの要素から構成されます。
- Identify(識別)=感情を感じ取り察知する能力
- Use(利用)=問題や課題に対する感情をコントロールし必要な感情を生み出す能力
- Understand(理解)=自分や相手がなぜこのような感情になっているのか、その感情の変化を推察する能力
- Manage(調整)=上記3つの能力を発揮した上で、目的を達成するためにどのような行動をとるべきか決定する能力
SQとEQは似たような概念ですが,SQのS=Socialを意味し、「特に他社とかかわるときに発揮される社会性や対人能力」を指します。EQ/SQが日々の仕事でどれだけ重要な役割を果たしているかは、改めての説明は不要かと思います。
よくIQは先天的なもので改善が難しい、一方でEQは後天的でラーニングが可能、という言葉を聞きます。私はIQは鍛えれば向上が望めるしその努力を怠るべきでないと思っております。ここでのIQとは知能テストの点数のような狭い概念ではなく、特に仕事をしていく上での基本スキルとなる問題解決能力のことです。その信念に基づき、新たに学生の皆様を対象とした問題解決スキル養成講座を開設することにしました。完全にボランティアベースで行いますが、実践的なスキルを習得することが私の目指すところですので、リアルなコンサルティングプロジェクトを経験していただける内容にしていく予定です。
学生の皆さんに触発されて、私も一層頑張らなくては、と思える経験でした。
コンサルタント
堤 裕次郎